この前、甥っ子が産まれたんだ
出産祝いを贈ろうと思うんだけど…どんなものが喜ばれるかな?
かわいい甥っ子とお父さん・お母さんへの出産祝い、何を贈れば喜んでもらえるのか…?
どうせなら、一生モノがいい!
末長く使えたら、お父さんお母さんも子どももうれしいよね。
悩んでいるあなたに、オススメのアイテムがあるよ。
ハコイス?
これ、ベビーチェアなんだ!
まるで木箱みたいな、かわいらしいハコイス。
ハコイスは札幌市のイス職人、通称ハコイスおじさんがひとつひとつ手作業で製作しているよ。
ハコイスを使うにあたって、
- どんな特徴があるの?
- どんな感じで作られているの?
- 安全性は?
なんて、気になることもあるよね。
だから、ハコイスの製作風景を取材!札幌市のハコイス製造工房を訪ねてきたよ。
ハコイスには北海道の木が使われているんだけど
林業の世界についてもぜひ知ってほしいな
ハコイスとは?
ハコイスは、四角い形をした木製のベビーチェア。
サイズは、
- 幅約32cm×高さ約32cm×奥行き約20cm
- 重さ:約3.5kg
コンパクトな箱型が特徴。
置き方によって、おすわりができるようになったばかりの子どもから大人まで使えるよ(画像参照)
静荷重試験を行ったところ、結果は(画像左の置き方から順に)
- 40kgまで(3歳~小学校入学くらいまで)
- 40kgまで(おすわり期~2歳頃まで)
- 100kgまで(5歳~小学生くらいまで)
- 500kgでも壊れなかった(1歳~大人まで)
大人が座る場合は、一番右側にある置き方で座ってね。
すべてが座面として使えるハコイスは、踏み台や本棚などイス以外の用途もアリ。
だから、子どもが大きくなっても使い道があるよ。
ハコイスおじさんのお宅では、冬の間リビングにこたつを置いているそう。
ローテーブルの座椅子として、一人一台ハコイスに座っているんだって。
ハコイスと過ごす家族の時間…
大人になってもおぼえていてくれたらうれしいよね!
「購入したみなさんはどう使っているのかな?」って気になっているあなたはぜひ、ハコイスのレビューブログを読んでみてね。
ベビーチェアって短い期間しか使わないから、「レンタルでもいいか~」「お下がりを使ってるよ!」って方も多いと思う。
でも、ハコイスには長く使えるための秘密があるんだ。
つぎからは、ハコイスの秘密をくわしく説明するね。
高品質な北海道産木材を使用
ハコイスに使われている木材は、道南産のタモ材。
林業王国北海道とも呼ばれ、道民の身近なところにある木。
古くはアイヌの人々の衣類アットゥシ(木の内皮からつくった糸を用いて織った布)や木彫りの熊などに加工されたりもしたんだ。
保存性が高いタモの木は、太くてまっすぐないい丸太になるよ。
野球バットやテニスラケットなど、スポーツ用品の素材として使われることが多いんだ。
約50年~80年という時間をかけて、小さな苗木が立派な丸太に成長する。
北海道の気候に長年耐え抜き、寒さで鍛え上げられたタモ材は丈夫さも品質もピカイチだよ。
ハコイスを製作するにあたり、さまざまな木材で試作を重ねたんだそう。
外国のパイン材やカラマツなどいろいろ試した結果、「北海道産の木材がいいね!」って結論にたどり着いたんだって。
上の画像は、すべてハコイスの試作品。
柔らかい木材だと、割れや欠けが起こりやすい。
「些細な割れや欠けもケガや事故のもとになってしまうから、素材探しに時間をかけた」とおっしゃっていたよ。
ところで
ハコイスを見て気が付いたことはないかな…?
きれいな柾目(まさめ)だね
高級感ある見た目だから飾るだけでもステキだな
節ひとつない、なめらかな柾目(木材の中心あたりを切ったとき表面に現れる直線的な木目のこと)
節のない特注品の木材を使用しているんだ。
「長く使ってもらうには、美しく品質がいい木材で」
そんなハコイスおじさんの要望に応えてくれる製材メーカーさんは、なかなか見つからなかった。
広大な北海道内をあちこち訪ねて、ようやく道北の下川町にあるメーカーさんにめぐり会えたんだって。
「プラスチックで作ることもできるけど、劣化しやすい。品質面だけではなく、長年住んでいる北海道に自分にしかできない方法で貢献できないか?との想いが強くあった。だから北海道の木材を選んだ」とおっしゃっていたよ。
素人には再現不可能!職人の知恵と技術が活きている
シンプルな構造のハコイス。
もしかしたら、自分でDIYできるんじゃないか…!?と思ったそこのあなた!
素人には再現不可能、10年以上のキャリアを持つハコイスおじさんの技術がギッシリ詰め込まれているんだ。
ハコイスは4枚の木材を組み合わせた、シンプルな構造。
しかし、テキトーに木材どうしを組み合わせてクギ打ちをしたら、高さが合わなかったりズレが起きてしまう。
「木材を組み合わせる順番は企業秘密」とのこと。
ここにも、ハコイスおじさんの知恵と技術が活きているよ。
板の厚さにもこだわりが。
ほんの2mm厚くするだけで、強度が増す。
しかし、ハコイスそのものの重量も増してしまうんだ。
このバランスがむずかしいところで、
- 家庭用ハコイス:大人の監督の下に使うので厚さ18mm
- 施設用ハコイス:子どもが運ぶことを想定してそれ以上に薄くする予定(現時点では試作中)
と規格を決めたんだって。
たとえば2mm厚くしただけで、重さは500gもちがってくるよ。
ペットボトル1本分の重さのちがい…
子どもにとってその差は大きいね
そういえば
座面の接合部分にスキマがあるような気がするんだけど…?
という疑問をお持ちの方もいるのでは?
パッと見は、スキマがあるように見える。
しかし、カンナがけをして角を落とした部分がスキマのように見えているだけであって、実際はしっかり接合されているよ(画像参照)
ほんの0.1mmの誤差で、仕上がりにガタつきが出てしまう。
だから、作りはじめる前に木材の寸法を必ずチェック!
上の画像をよく見てほしい。
上に重ねた板がごくわずかに短いから、残念ながらハコイス用には使えないとのこと。
規格から外れた木材は、他の用途に使用しているんだって。
安全性と美しさの両立
品質がいい木材=木が固い。
つまり、加工するには時間がかかる。
1個のハコイスが完成するまで、約1時間~2時間の時間を要するんだ。
作業時間の大半は、カンナ・ヤスリがけに費やしているよ。
板のコンディションによって、ヤスリがけの時間も変わってくる。
専用の機械にサンドペーパーを装着し、時間をかけてなめらかにしていくよ。
このとき、粉じんまみれになってしまうからマスク・ゴーグルが必須。
「安全に作業するためには、きちんと自分の身を守ること」とおっしゃっていたよ。
そういえばクギの頭が見当たらないね
クギ打ちした部分は、木ダボで隠されているんだ。
ダボ打ちをしてクギを隠すことにより、安全性と美しさを両立できるよ。
「ハコイスはクギを使わずホゾを組んで作ることもできるけど、強度や長く使っていただくことを考えるとクギやビスできちんと固定した方がいい」と、職人ならではのアイディアが活かされているよ。
ホゾを入れた部分・木材表面の溝など、ミリ単位のわずかなスキマは補修剤を使って埋める。
わずかなスキマでも、長く使っているうちにそこからヒビ割れが起きてしまう。
だから、時間をかけてていねいに補修していくよ。
ふたたび全面をていねいにヤスリがけして、完成。
完成品はすべて目視&触ってチェック!
木材のバリや毛羽立ちはないか?ガタつきはないか?
ひとつひとつ確認しているよ。
ハコイスさんの事業内容・製品について
ハコイス製作のほかにどんな事業をしているのか?どんな製品を作っているのか?
再び取材してきたので、ぜひ読んでみてね。
ハコイスファミリーエピソード
ここからは、ハコイスおじさんとご家族について紹介させてね。
ハコイスファミリーは、ハコイスおじさんと奥さまのイワシさん(@soregadoshita39)、そして3人の子どもたちの5人家族。
道内各地でキャンプをするのが、家族みんな共通の趣味。
リリオさんが住む道南にも、たびたび訪れているんだって。
道南の木の良さを実際に見て確かめてくださっているんだ…
こんなにうれしいことはないよね!
3人の子どもたちも、みんな明るくて素直ないい子たち。
元気にあいさつしてくれたことが、とても印象に残っているよ。
末っ子ちゃんとは、ハコイスで一緒に遊んだよ。
ハコイスに座ったり、遊び道具として使ったり。
お父さんの仕事を間近で見ている子どもたちのそばには、いつもハコイスがあるよ。
ハコイスファミリーのみなさんがあたたかく迎えてくださったことは
忘れられない思い出になったね
この場を借りて御礼申し上げます!
ハコイスおじさんとイワシさんのお二人は、木育マイスターでもあるんだ。
「ハコイスを作るだけじゃなく、自身の活動を通して北海道の木の良さを伝えたい」
口をそろえてそうおっしゃるお二人。
イス職人業界のことだけではなく、子育て・林業・北海道のことも支えたいという想いが伝わってきたよ。
「ハコイスは、自分の子どものような存在。一個作り上げることに気持ちはリセットされる。一個一個がそれぞれひとりの子どものよう」と、顔をほころばせるハコイスおじさん。
その横で、「私にとってハコイスは芸術品」とやわらいだ表情で語るイワシさん。
赤ちゃんは目の前にあるものを口に入れたり舐めたりするから、あえて無塗装。
どこでも手を伸ばし触れてしまうから、ケガしないように時間をかけてヤスリがけ・スキマの補修をする。
お二人の育児経験が、ハコイスを作り上げたんだ。
ハコイスから考える技術の未来
どこの業界も、深刻な後継者不足に悩まされている。
イス職人の世界でも、50~60代の方が多いとのこと。
これから業界を牽引する年代…30代の方はごくわずか。
だから、技術を後世に残すことさえも危ぶまれているよ。
ハコイスに使われている木材だって、林業に携わる方々のおかげで手に入る。
しかし、林業の世界も例外ではなく、職人さんの高齢化・人材不足の問題に直面しているんだ。
冒頭でも書いたけど、一本の苗木が木材として使えるようになるまで、半世紀以上もの時間がかかっている。
それまでに、どれだけの工程を経ているのかあなたは知ってる?
木を伐ったあとに残っている根や枝を整理して、苗木を植えられるよう整える
苗木を植える
雑草や潅木を刈り払う
木に巻き付くつるなどを除去する
余分な枝・枯れ枝を1本ずつ伐って整理する
密になった森を調整、木の成長を促進させる
木の収穫
伐った木を規定の長さに切断し、丸太にする
これだけ多岐にわたる。
しかし、大半の人はこれを知らない。
むやみに木を伐っているのではなく、計画的に作業を行い循環する森づくりをしているんだよ。
ものづくりには、多くの人の力がなければ成り立たない。
木を植えた人、手入れをしてくれた人、丸太から製材してくれた人…。
そして、ハコイスおじさんがバトンを受け継ぎ、ハコイスを作り上げる。
この壮大なストーリーは、手に取ってくださったあなたが。
そして、あなたの大切なお子さんが使うことでようやく完結するんだ。
さいごに
「事業が大きくなったら、雇用を生み出したい。そして、後継者を育てたい」
ハコイスおじさんは、そうおっしゃっていたよ。
子どもたちが、「これはどうやって作られているんだろう?」と技術に興味を持ってくれたら。
大人たちが、「子どもにはいいものを使わせたい」と、職人の技術・ものの価値を正しく伝えられるようになったら。
そんな世の中になってくれることを、心から願っているよ。
自然の素材を使い、手作業で作られるハコイス。
同じものは二つとない、あなたのもとに届いたハコイスはあなただけのもの。
だから、大人になるまで末永く使ってほしいな。